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お金を借りると、返すときに「利息」がつきます。いまは当たり前のことですが、その利息に上限が決められているのは、長い時間をかけて積み重ねられてきた結果です。
今回は、日本でお金の貸し借りのルールがどう作られてきたのかを、昔から順にたどってみます。借りる側が守られるようになった道のりを知っておくと、いまの仕組みが少し頼もしく見えてきます。
利息の始まりは「お米の貸し借り」だった
日本で利息つきの貸し借りがはっきり見られるのは、奈良時代ごろの「出挙(すいこ)」という制度です。春に稲を貸し、秋の収穫のあとに利息をつけて返してもらう仕組みでした。
もとは農民の暮らしを助けるための制度でしたが、利率はかなり高く、返せない人が増えて負担になっていきます。朝廷が利息の上限を定めようとしたのも、このころから借りる側の苦しさが問題になっていたからでしょう。
鎌倉・室町時代、借金帳消しを求めた人たち
鎌倉から室町にかけては、土倉(どそう)や酒屋が、お金を貸す商売を営むようになります。商売が広がる一方で、借金に苦しむ人も増えました。
そこで出てきたのが「徳政令」です。借金を帳消しにする命令で、鎌倉時代の「永仁の徳政令」が有名です。室町時代には、人々が集団で借金の帳消しを求める「土一揆」も起きました。
利息そのもののルールというより、借金に追い詰められた人たちが声を上げた時代でした。
江戸時代は「借りる人を守る」と「貸す人が困る」の綱引き
江戸時代になると商業が発達し、お金の貸し借りも暮らしに身近になります。幕府は金利の上限を意識した触れを出していたとされ、年1割5分前後が目安になっていたといわれています。
一方で、借金の争いが増えすぎて、1719年には「相対済令(あいたいすましれい)」が出ました。お金の貸し借りのもめごとは、当事者同士で解決してください、と役所が受け付けを断ったものです。
18世紀末の「棄捐令(きえんれい)」では、武士の借金を帳消しにしたり、低い利息に直したりしました。ただ、貸す側が貸し渋るようになり、かえって困る人が出たともいわれています。借りる人を守りすぎれば貸す人が減り、貸す人を守りすぎれば借りる人が苦しむ。この難しさは、昔から変わっていないようです。
明治10年、はじめての「利息制限法」
近代的なルールが生まれたのは、明治の初めです。1877年(明治10年)に、いまの利息制限法のもとになる決まりができました。借りる金額に応じて上限の利率を定めるもので、金額が大きいほど上限が低くなる考え方は、いまも続いています。
昭和29年、「利息制限法」と「出資法」の二本立てに
現在の形に近づいたのは1954年(昭和29年)です。この年に、新しい利息制限法と、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)がそろいました。
- 利息制限法:上限を超えた部分の利息は無効になる(民事のルール)
- 出資法:一定以上の高金利で貸すと刑事罰の対象になる(刑事のルール)
ところが、この二つの上限には大きな差がありました。利息制限法の上限は年15〜20%なのに、出資法の上限は年109.5%という高さでした。
「グレーゾーン金利」が生まれた時代
利息制限法の上限は超えているけれど、出資法の上限は超えていない。この中間の金利帯が「グレーゾーン金利」です。
当時は一定の条件を満たせば、グレーゾーンの金利を受け取っても有効とみなされる扱い(いわゆる「みなし弁済」)がありました。1970年代から80年代にかけては、高い金利と厳しい取り立てが社会問題になり、「サラ金問題」と呼ばれるようになります。
そこで1983年に、貸金業規制法ができました。貸金業者の登録制や取り立ての規制が始まり、出資法の上限も段階的に引き下げられていきます。2000年には年29.2%まで下がりました。
2006年の最高裁判決から、貸金業法の大改正へ
大きな転機は2006年でした。最高裁判所が、グレーゾーン金利のみなし弁済をほとんど認めない判断を示したのです。払いすぎた利息を取り戻す「過払い金」の返還請求が、広く知られるようになりました。
この流れを受けて、同じ2006年に貸金業法が大きく改正され、2010年6月に完全施行されました。主な変更点は次のとおりです。
- 出資法の上限金利が年20%に引き下げられ、グレーゾーン金利がなくなった
- 「総量規制」が導入され、借入総額が年収の3分の1までに制限された
- 貸金業者の登録の条件が厳しくなった
昔の人たちが残してくれたもの
ここまでを振り返ると、利息のルールは一度に完成したものではありませんでした。借金に苦しむ人が出て、声が上がり、社会が少しずつ見直す。その繰り返しで、いまの仕組みができあがっています。
だからこそ、いまお金を借りるときに知っておきたいことがあります。
- 借りるなら、金融庁に登録された貸金業者かどうかを確認する
- 契約書面の金利(実質年率)を、きちんと読む
- 上限を超えるような金利を提示する業者や、登録のない業者には近づかない
返済が苦しくなったときも、ひとりで抱え込まないでください。法テラスや自治体の無料相談窓口、日本貸金業協会の相談窓口など、相談できる場所が用意されています。
お金を借りること自体は、悪いことではありません。ただ、「ルールがある」と知っているかどうかで、選び方は変わります。長い歴史の中でできた仕組みを知ったうえで、自分に合った借り方、返し方を落ち着いて考えていきましょう。