コンビニの隅に立つATM。
その前に立った瞬間、私は少しだけ賢くなる。
いや、正確には哲学的になる。
画面にはシンプルな選択肢。
「お引き出し」
「お預け入れ」
そして、あのボタン。
指を伸ばしかけて、止まる。
ここで急に考え始める。
「お金とは何か」
「欲望とは何か」
さっきまで普通におにぎりを選んでいた男とは思えない。
たかがボタン、されどボタン。
押せば数秒で完了する。
文明はこんなにも便利なのに、心はやたらと重たい。
頭の中で未来の自分が登場する。
腕を組み、静かにうなずく。
「その決断、ちゃんと説明できるか?」
急に面接みたいになる。
深呼吸をひとつ。
ATMは何も言わない。
ただ光っている。
その無言が、やけに強い。
結局、今日は何も押さずに帰った。
用事は済んだのに、なぜか少し達観した気分だ。
たぶん私は、数分間だけ哲学者だったのだろう。
ATMの前でだけ深くなる思考。
あの空間には、ちょっとした人生の縮図がある。
次に立つときも、きっとまた急に考え始めるのだと思う。
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