その一歩は、とても軽い。
ATMの前に立ち、画面に表示される選択肢。
指を伸ばせば、すぐに完了する。
便利とは、ここまで速いのかと感心する。
でも、そこで「ちょっと待った」が入る。
心の中の審判が、笛を吹く。
ピピーッ。
試合は一時停止だ。
本当に今か。
今日じゃなきゃダメか。
それは必要か、それとも気持ちの焦りか。
さっきまで「まあいけるやろ」と思っていたのに、
急に数字が現実味を帯びてくる。
未来の自分の顔が、うっすら浮かぶ。
あの人、わりと真面目なんだよな。
もちろん、使うこと自体が悪ではない。
本当に必要な場面もある。
でも「なんとなく」で踏み出す一歩は、あとで少し重たくなる。
深呼吸して、もう一度画面を見る。
ボタンは逃げない。
焦らなくても消えない。
今日は、一歩引いた。
何もドラマは起きない。
でも、静かに自分を守れた気がする。
キャッシング、ちょっと待ったその一歩。
その数秒の間が、案外いちばん大事なのかもしれない。
便利さの前で立ち止まれるなら、まだ大丈夫だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿