「来月の給料日に返せばいいか」
「ボーナスが出たら、まとめて返せるし」
お金を借りるとき、頭のどこかでこんなふうに考えたことはないでしょうか。
この言葉は、決して悪い考え方ではありません。見通しを立てているということですし、責任感のある人ほど自然に出てくる言葉でもあります。
ただ、この「あとで返せばいい」には、心理的なクセがいくつか重なりやすい、少し厄介な一面もあります。今回は借りることの是非ではなく、そのとき心の中で何が起きているのかを、ゆっくり整理してみます。
「未来の自分」は、なぜか余裕がある人に見える
人は、将来の自分を実際より余裕のある存在として想像しがちだと言われます。
今の自分は、疲れていて、時間もお金もギリギリ。でも一か月後の自分は、なぜか元気で、残業も増えていて、急な出費もなく、すっきり返済している。そんな姿を思い描いてしまうのです。
心理学では、将来の見積もりが甘くなる傾向を「計画錯誤」と呼ぶことがあります。仕事の締め切りでも、夏休みの宿題でも、経験がある人は多いはずです。
ところが現実には、来月にも来月なりの出費があります。急な飲み会、家電の故障、冠婚葬祭。「今月だけ特別」のつもりが、来月も再来月も「特別」になってしまうことは、珍しくありません。
「今」の苦しさは大きく、「先」の負担は小さく見える
もうひとつ、人の心にあるクセが「現在バイアス」です。
目の前の困りごとは、とても大きく感じられます。反対に、数週間先の返済は、霧の向こうにあるようにぼんやりして見えます。
だから「今を乗り切ること」が最優先になり、「返すときの自分」の負担は軽く見積もられてしまう。これは意志が弱いからではなく、人間の脳が自然にそうなりやすいだけです。
責める必要はありません。ただ、知っておくだけで、判断が少し冷静になります。
「返せばいい」が、いつの間にか「返せる前提」になる
さらに気をつけたいのが、言葉の変化です。
最初は「返せたらいいな」だったものが、
「返せるはず」になり、
いつの間にか「返せるに決まっている」になっていく。
こうなると、返済が遅れそうになったときに、心の中で次のような流れが起きやすくなります。
- 計画どおりにいかない自分を認めたくなくて、考えるのを後回しにする
- 通知や明細を開くのが億劫になる
- 「次の給料で何とかなる」と、期限だけを先へ先へ延ばす
「見て見ぬふり」は、だらしなさではありません。不安から自分を守ろうとする、ごく自然な反応です。ただ、そのぶん状況が見えなくなり、気づいたときに負担が大きくなっていることがあります。
「あとで」の中身が、実は空っぽのことがある
「あとで返せばいい」と言うとき、その「あとで」に具体的な中身はあるでしょうか。
- いつ、いくら返すのか
- そのお金は、どこから出てくるのか
- 返したあとの生活費は、残るのか
ここが曖昧なまま「あとで」と言っている場合、それは計画というより願望に近いものかもしれません。
もちろん、願望を持つこと自体は悪くありません。でも、願望のまま借りてしまうと、返す段階で現実とのギャップに苦しみやすくなります。
借りる前に、紙に書いてみる
では、どうすればいいのか。難しいことをする必要はありません。借りる前に、次の3つだけ、紙やメモアプリに書いてみてください。
- 毎月いくら返すのか(借入額だけでなく、利息を含めた返済額で)
- それを返したあとに、手元にいくら残るのか
- 予定外の出費が出たとき、どうするのか
頭の中で考えているうちは、「なんとかなる」で終わってしまいます。書き出すと、数字が現実の形になります。
もしここで「ちょっと厳しいかも」と感じたなら、それは大事なサインです。借りる額を減らす、時期を変える、別の方法(家族や公的な相談窓口など)を探してみる。そうした選択肢を考える時間を、自分にあげられたということだからです。
「返せるか不安」と感じたことは、弱さではない
最後に、ひとつだけ。
借りるときに少し不安になる人は、むしろ慎重で、誠実な人です。その不安を「気のせい」で押し込めてしまうより、「なぜ不安なんだろう」と丁寧に見てあげるほうが、ずっと自分のためになります。
「あとで返せばいい」という言葉は、そのまま信じ込むと危うくなります。けれど、「あとで返すために、今何を決めておこう」と言い換えれば、あなたの味方になってくれます。
借りることを責めない。でも、未来の自分に丸投げもしない。そのくらいの距離感が、お金とうまく付き合うコツなのかもしれません。
返済で悩んだときは、一人で抱え込まず、貸金業者への相談だけでなく、法テラスや自治体の無料相談窓口、日本貸金業協会の相談窓口など、公的な相談先もあります。「まだ大丈夫」と思えるうちに話してみるのも、立派な選択肢のひとつです。
※本記事は特定の借入を勧めるものではありません。借入の際は、ご自身の収入と返済計画を十分にご確認ください。
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